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【最終回】柳澤ゆり子『和のある暮らしを楽しむ』


vol.12 冬至には運とビタミンを取り込む
 

つい先日まで「袷の着物はまだ暑いですね・・・」などと話していたものですが、気がつけば日に日に夕暮れの時刻が早まり、1年の中で昼が一番短く(夜が一番長く)なる日「冬至」が近づいています。
冬至は毎年12月22日頃(今年2018年は12月22日)です。 冬至の日は、日照時間が短い為太陽のパワーが最も弱まる日と考えられますが、翌日からは、日に日に日が長くなる事から「太陽が生まれ変わる日」とも考えられています。尚、この冬至を特別視する考え方は日本だけのものではなく、世界中にお祭りがみられ、太陽の復活祭などと呼ばれているようです。この太陽の復活を祝う冬至祭がクリスマスの始まりとする説もあり大変興味深いです。

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●◯ 一陽来復に運を取り込む ◯●

 この日を境に日が長くなっていく為、太陽が生まれ変わる日とも言われる冬至は、これを境に「運気が上向く」とも考えられており、「一陽来復(いちようらいふく)」と呼ばれます。これには、 冬が終わり春がやってくる、 悪いことが続いた後で幸運に向かう、 新しい年がやってくるといった意味があります。又「一陽」には、陰が極まれば陽と転ずるという意味が、「来復」には、太陽の力が回復するという意味があります。西早稲田の穴八幡宮では一陽来復御守の配布初日にあたる冬至の日には、御守を求める方々で長蛇の列ができるとか。

◎運盛り◎
一陽来復に通じるものとして「運盛り」があります。 これは「ん」のつく物を食すことによって「運」を体内に取り込むというもので「いろはにほへと」も「ん」で終わるので、一周回って又「い」から始まるぞ、という考え方のようです。 「ん」が1つより2つつくものはより良いとされていますので、にんじん・れんこん・きんかん・ ぎんなん・かんてん・なんきん(南瓜の事)・なんばん(唐辛子)などはお勧めでしょうか。

【なんきん・にんじん】βカロテンが多く含まれ、これが体内でビタミンAに変換され、皮膚や粘膜を強くすることによって風邪の予防に役立ちます。また、βカロテンには優れた抗酸化作用があるので、コレステロールが血管壁に沈着するのを防ぎ、動脈硬化や脳卒中を予防してくれるそうです。

【れんこん・きんかん】ビタミンCが豊富に含まれていて、風邪予防に

【かんてん】水溶性食物繊維としてコレステロールの排泄を促進することによって脳卒中の予防に役立つそうです

◎運を取り込む前には邪気を祓う◎
我々日本人は古来より季節の変わり目や何かの節目毎に邪気を祓い身を清めながら生活して参りました。冬至に浸かる「柚子湯」も単に柚子に含まれるビタミンを体内に取り込みやってくる冬に備える為だけではなく、端午の節句の菖蒲湯と同じで、運を取り込む前には香りの強いもので厄を祓う必要があるという考え方によるものです。

【冬至粥(小豆粥)】小豆の赤は太陽を意味し、厄除けになると考えられています。 かぼちゃ(なんきん)と小豆を一緒に煮て頂く「いとこ煮」を頂く地域もありますね。ビタミン豊富なかぼちゃは夏の野菜ですが保存が効くので、厳しい冬がやってくる前に頂き、かぜに負けない栄養を蓄える意味があります。又、小豆は昔から赤い色が邪気を祓うとされ、季節の変わり目毎に小豆を摂取して参りました。お祝いの際に頂くお赤飯も、邪気を祓い良き運を取り込もうとする習慣です。


●◯ おわりに ◯●

 日々の慌ただしく流れゆく時間の中で歳時記や行事食を意識する事は容易な事ではありません。そんな時には入手し易く頂き易い柚子茶がお勧めです。お湯で割るのではちょっと甘すぎる・・・という方には緑茶割をお試し頂きたいです。柚子と緑茶、ダブルでビタミンCを補給できる優れものなだけでなく、柚子の香りで邪気を、緑茶のカテキンパワーでこの時期の厄介者インフルエンザや風邪を祓う事もできます。

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「ん」のつく根菜類をたっぷり入れて、けんちん汁や豚汁を食すのも良いですね。ここにうどん(うんどん)を入れたら最強の運盛りメニューになるでしょうか。クリスマスももちろん良いのですが小豆や柚子で邪気を祓い、運盛りやビタミン補給で、これからやってくる寒い冬に負けない皆様であります事を願っております。

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◎ P R O F I L E ◎

yanagisawa_pro.jpg歳時記・和菓子研究家 柳澤ゆり子

パリへ行く!と思い立ち仕事を辞めて渡仏。自国の文化を学ぶ必要を強く感じ、帰国後は着物・煎茶道・和菓子・折形・風呂敷・金継などを学ぶ。ほんの一滴、和のエッセンスを加える事で潤う日々の暮らし。花・茶・和菓子といった身近なアイテムを取り入れることで、四季を感じる暮らしをもっと楽しんでいただけたら、そんな想いで地元鎌倉を中心に活動中。モットーは「美味しく楽しく美しく」。

季節の和菓子と日本茶を楽しむ会・風呂敷塾を主宰。
京都造形芸大(通信)和の伝統文化コース卒業/日本茶アドバイザー/風呂敷愛好家

更新日:2018年12月5日(水)